移転価格コンサルタントとして働く公認会計士の日常

公認会計士、税理士。現在Big4系税理士法人でマネージャーとして勤務。

BEPSについて② (国別報告事項:CbCR)

BEPS行動計画13で求められている3つの書類のうち国別報告事項について解説します。

国別報告事項とは、多国籍企業グループの国別の活動状況に関する情報のことです。英語では、Country-by-Country Report と言い、CbCRと略されることもあります。報告様式は国税庁のホームページに掲載されており、記載は英語で行う必要があります。

国別報告事項は最終親会社の直前の会計年度の連結総収入金額1,000億円以上の多国籍企業グループに対して、e-Taxにより所轄税務署長に提供することが義務付けられています。

提供期限は、最終親会社等の会計年度終了の日から1年以内となっており、適用対象年度は、平成28年4月1日以降に開始する最終親会社等の会計年度からとなっています。

つまり、3月決算会社であれば平成30年3月31日、12月決算会社であれば平成30年12月31日が提供期限となります。

大部分の3月決算のクライアント様であれば、平成29年3月期の数値は固まっているので作成に取り掛かられています。

 

国別報告事項は日本と外国との租税条約に基づく自動的情報交換制度により、海外子会社等の居住地国の税務当局へ提供されます。国別報告事項は、英語で作成しなければなりませんが、海外の税務当局との情報共有を容易にすることが目的であると考えられます。

海外の税務当局は、国別報告事項を利用して、当該国における利益率と他国の利益率の比較が可能となります。利益率が低い場合には、税務調査の対象となることが考えられますので、その合理性を証明できるような準備が必要です。

BEPSのルールにおいて、国別報告事項の内容を直接課税には使用しないとされていますが、調査対象企業の選定においては利用されることが想定されます。そのため、この機会に各海外拠点の移転価格リスクの管理を行うことをお勧めします。

 

幣法人では国別報告事項作成のためのサポートや、作成済の国別報告事項のレビュー、事業概況報告事項、ローカルファイルとの整合性チェックなどのサービスを提供しております。

但し、国別報告事項作成のベースとなるデータはクライアント様がお持ちですので、国別報告事項の作成自体はクライアント様のほうで行われているケースが大部分です。

グループ会社数の少ない企業であれば作成自体はそこまで大変ではないかと思いますが、グループ会社数の多い企業様にとっては相当煩雑な作業となります。また、国別報告事項は毎年作成の必要があるので、効率の良い作成方法を構築されるのをおすすめしています。

連結システム会社によっては国別報告事項作成のためのツールを作成しているところもありますのでご検討ください。