移転価格コンサルタントとして働く公認会計士の日常

公認会計士、税理士。現在Big4系税理士法人でマネージャーとして勤務。

BEPSについて③ (事業概況報告事項:マスターファイル)

本記事ではBEPS行動計画13で求められている3つの書類のうち事業概況報告事項(マスターファイル)について解説します。

事業概況報告事項とは、多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況等のグローバルな事業活動の全体像について記載した書類です。

事業概況報告事項は、国別報告事項と同様に最終親会社等の直前の会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループに対して、e-Taxにより所轄税務署長に提供することが義務付けられています、

提供期間、適用対象年度も国別報告事項と同様です。

ただし、マスターファイルの提供義務の基準については国ごとに異なっているため、日本の親会社の連結総収入金額が1,000億円未満であっても子会社の所在国のルールによっては子会社には提出義務が課される可能性があります。

一般的には連結総収入金額が1,000億円未満の日本親会社はマスターファイルを作成しておりませんので、そのような企業様においても子会社の所在国の税制改正動向のキャッチアップが必要となります。

個人的には各国で統一的なルールを定めるべきであると思いますが、各国ごとに異なったボーダーラインで提出義務を規定しているのが現状です。

また、マスターファイルについては子会社において提出義務が課された場合に備えて日本語版、英語版を準備しておくのが一般的です。また、毎年アップデートを行い、提供する古語が義務付けられています。

基本的には毎年大幅なアップデートは必要ないので、毎年のアップデートについては企業様で行い、3年~5年に一度税理士法人のサポートを受けて大幅な見直しを行うのをお勧めします。

私の立場からは毎年ご依頼いただきたいですが、企業様のほうで毎年のアップデートについては十分対応可能と思われます。

 

現状のクライアント様の事業概況報告事項への対応状況ですが、ローカルファイルのボリュームが多いため、多くの3月決算のクライアント様では事業概況報告事項の作成が完了しています。

記載例が国税庁帆のホームページに掲載されておりますので、事業概況報告事項の作成は企業独自で行うことも可能です。

ただし、海外子会社においても所在国の税務当局への提出が義務付けられる可能性がある(既に税制改正の影響で提出が義務付けられている国もあります)ため、初年度は大手税理士法人にサポートを依頼することをお勧めします。

特に、サプライ・チェーンの分析や機能リスク分析にはノウハウが必要ですので、企業独自に作成することはお勧めいたしません。