移転価格コンサルタントとして働く公認会計士の日常

公認会計士、税理士。現在Big4系税理士法人でマネージャーとして勤務。

BEPSについて④ (ローカルファイル)

BEPS行動計画13で作成が求められている3つの書類のうち最後のローカルファイルについて解説します。

ローカルファイルは3つの書類のうち最もボリュームが多いため、早めの準備をお勧めします。

全事業年度に一の国外関連者との間で行った国外関連取引の合計額が50億円以上又は無形資産取引の合計額が3億円以上である法人は、国外関連者との取引についてローカルファイルを確定申告の提出期限までに作成又は取得し、保存することが義務付けられました。これを同時文書化義務といいます。

ローカルファイルについては、国別報告事項や事業概況報告事項と異なり、作成期限は確定申告の提出期限とされています。

つまり、3月決算会社の場合には6月末(連結納税を行っている企業の場合は2カ月延長が一般的なので7月末)が作成期限となります。

ご存知の方も多いと思いますが、平成29年6月に国税庁から移転価格ガイドブックが発行されました(国税庁ホームページをご覧ください)。移転価格ガイドブックにはローカルファイルのサンプルが記載されていますので、参考になるかと思います。

また、移転価格ガイドブックには企業への個別照会についての記載があります。個別紹介は別表17(4)の情報などを参考に同時文書化対象法人の中から対象企業を選定します。

照会内容は、ローカルファイル作成における機能分析、独立企業間価格の算定方法、比較対象取引の選定や利益率レンジの設定等です。照会に先立ち、ローカルファイルのドラフトや紹介の対象となる取引の概要に係る資料について郵送による提出が求められています。

それ以外にも企業訪問の規定も新設されました。企業訪問は行政指導ではなく、個別鍾愛と同様に別表17(4)の情報などを参考に対象企業を選定します。

企業訪問は2時間程度でローカルファイルの作成状況や内容について確認を受けます。また、その際に関連資料の提出を求められる可能性もありますが、提出義務はありません。

ローカルファイルの作成は、これまで移転価格文書を作成されていた企業であれば大きな抵抗はないかと思いますが、それ以外の企業にとっては大きな負担になります。特にベンチマーク分析は企業独自で行うことは困難かと思いますので大手税理士法人にサポートを依頼することをお勧めします。

現状ではまだローカルファイルの作成を開始されていないクライアント様も多々いらっしゃいますので、これから作成を開始しても作成期限には十分間に合います。