移転価格コンサルタントとして働く公認会計士の日常

公認会計士、税理士。現在Big4系税理士法人でマネージャーとして勤務。

移転価格税制について①

移転価格税制の概要

 

移転価格に関して書かれた参考書は書店に行けばありますが、全く馴染みのない方が簡単に理解できるような参考書は見たことがありません。

そこで、できるだけ簡単に移転価格税制の説明をさせていただきます。

 

棚卸資産取引

 

移転価格とは、企業グループ内の取引価格をいいます。

以下、日本よりも税率の低いシンガポールを例にとって説明します。(仮に日本の税率を40%、シンガポールの税率を20%としています)

シンガポールに子会社を有する日系企業の日本親会社(A社)がシンガポール子会社に製品を200円で販売した場合、この200円が移転価格となります。(ケース1)

親子会社間の取引ですので100円で販売することも可能です。(ケース2)

この商品の原価が60円であったとし、シンガポール子会社はこの商品を外部に250円で販売するとします。(通貨は考慮せずすべて円としています)

この場合、日本国内で支払う税金、シンガポールで支払う税金はそれぞれ以下のようになります。

(ケース1)

(日本側)

(200円ー60円) × 40% =56円

(シンガポール側)

(250円ー200円) × 20% = 10円

この場合、この企業グループが日本、シンガポールで支払う税金は66円になります。

 

(ケース2)

(日本側)

(100円ー60円) × 40% =16円

(シンガポール側)

(250円ー100円) × 20% = 30円

この場合、この企業グループが日本、シンガポールで支払う税金は46円になります。

 

このように親子会社間の取引価格(移転価格)を操作するだけで企業グループ全体で支払う税金の額を操作することが可能です。

A社がシンガポールのお客さん(第三者)に対して製品を200円で販売している場合、これを独立企業間価格(ALP)といいます。

ケース1ではALPで販売しているため、日本の税務当局にとっては特に問題はありません。その反面、ケース2では100円で販売することによって日本で得られるはずであった税収が40円減ることになります。

A社に移転価格調査が入った場合、この40円が追徴税額として課税される可能性があります。

移転価格課税リスクを抑えるために、企業は移転価格に関するルールを定め、そのルールに基づいて移転価格を決める必要があります。