移転価格コンサルタントとして働く公認会計士の日常

公認会計士、税理士。現在Big4系税理士法人でマネージャーとして勤務。

移転価格税制について③

無形資産取引

 

移転価格が問題になる無形資産取引について記述します。

無形資産取引が問題になるのは特にOut-Out取引となります。

Out-Out取引とは、例えば日本親会社(A社)、シンガポール子会社(B社)、中国子会社(C社)を有する企業グループを想定するとB社、C社間の取引です。つまり、商流上日本を通らない取引をOut-Out取引といいます。

日系企業のグローバル化が進むにつれ、Out-Out取引は増加傾向にあります。

想定されるケースとしてはB社で製品を製造し、それをC社に販売し、最終的にはC社がシンガポール国内の第三社に販売するケースです。

この場合、日本親会社(A社)はB社に対して製品の製造ノウハウの供与や特許の供与を行うのが一般的です。しかし、Out-Out取引においてはB社がA社に対して無形資産の対価(Royalty)を支払わない限りはA社には全く利益が入ってこないことになります。

つまり、日本の税務当局にとってはOut-Out取引によって税収が得られないことになります。そこで無形資産取引が移転価格税制において問題になります。

仮にA社が中国のお客さん(第三者)に対して同様の製造ノウハウの供与や特許の供与を行った場合、その対価としてRoyaltyを受領するものと思います。これが無形資産取引における独立企業間価格です。一般的には製品の売上高の2%程度がRoyaltyの目安となります。

Royalty料率についてもベンチマーク分析を実施し、適切なレンジ(概ね1~5%程度)を算定する必要があります。Royalty料率は無形資産の内容によって大きく異なり、ベンチマーク分析は棚卸資産取引、役務提供取引のベンチマーク分析よりも専門性が高く煩雑なので税理士法人に依頼することをお勧めします。

無形資産取引についても他の取引と同様に独立企業間価格に基づいて算定したRoyaltyの金額に税率を考慮した金額が追徴課税の対象となります。

今後、日本経済が衰退すると日系企業のグローバル化がますます促進されることが想定されます。その場合、無形資産取引の重要性はますます高まることが想定されますので、無形資産取引に係る移転価格ポリシーを整備されることをお勧めします。