移転価格コンサルタントとして働く公認会計士の日常

公認会計士、税理士。現在Big4系税理士法人でマネージャーとして勤務。

公認会計士試験の学習方法(監査論)

監査論の学習方法

 

監査論の学習方法についても

①できる限り暗記をしない

②自分の言葉で答案を書く

が最も重要ですが、

③監査手続をできるだけイメージし、どのような目的でその監査手続を行っているかをイメージすること

も重要になります。

①、②については財務諸表論とほとんど同じなので割愛しますが、監査論については財務諸表論と比較すると暗記の重要性が高まります。監査論については規定の暗記が必要な論点があるため、それらの論点についてはある程度の精度での暗記が不可欠になります。

監査論は財務諸表論と比較して範囲が狭いのでまずは簡単に暗記します(80%程度の精度で構わないと思います)。最低限の暗記を完了させた後で理解を進めていきます。監査論についての理解を深めることで暗記の定着率も高まるので非常に効率的に学習できます。

 

監査手続のイメージ

 

②は③とリンクします。

監査手続をイメージできていれば自分の言葉で答案を書くことができます。

実査や立会などはイメージしやすいので簡単だと思います。

それ以外の監査論の基本的な用語に分析的手続があります。受験生であればだれでも定義を暗記していると思います。

分析的手続の定義は

「企業の財務情報を評価するため、財務データ間または財務データと非財務データの間にあると見られる関係を推定し、分析・検討する手法。具体的には趨勢分析、比率分析、合理性テスト、回帰分析などがある。」です。この文章だけだとちんぷんかんぷんだし、暗記していてもすぐに忘れてしまうと思います。

実際には当期と前期の財務数値を比較し、増減額または増減率が大きい項目について担当者にヒアリングし、必要に応じてエビデンスを入手し増減理由が異常ではないかを検討します。

また、月次推移を作成し、通常の動きと異なる異常な動きをしている月をピックアップして担当者にヒアリングを行い、必要に応じてエビデンスを入手し、金額の妥当性を確認します。

実際にやっている監査手続自体は決して難しくありません。(やってみればわかります)

ただ、監査経験のない受験生にとっては分析的手続の用語からこの手続をイメージするのは不可能だと思います。

もし会計士の知人がいれば教えてもらえますし、今の時代はインターネットで検索すれば何でも情報を入手することができます。それらを駆使して重要な用語だけでも監査実務に基づいた情報を仕入れてそれを答案に反映させるだけでも試験委員の心証は大きく変わります。

監査論はあくまで監査法人に就職して会計監査を行うための理論科目であることを意識し、理解を深めることが重要です。

 

公認会計士試験の学習方法(財務諸表論)

財務諸表論の学習方法

 

私が財務諸表論の学習で心がけていたのは、

①暗記はできるだけしない

②答案を丸暗記するのではなく自分の言葉で書けるようにする

③簿記の仕訳と関連付けて理解する

 の3点です。

 

①については以前にも記載しましたが、会計士試験の範囲は膨大ですし、毎年会計基準の改正があります。それをすべて暗記するのはほぼ不可能だと思います。もちろん、短答式試験を通過するためには暗記するのが手っ取り早いと思います。

ただ、論文式通過まで見据えて考えると少し問題をひねられると暗記式の勉強では歯が立ちません。そこで、私は理論科目の勉強では徹底した理解につなげるために基本書を読んでいました。 基本書はボリュームが多く、時間がかかるためまずは試験委員の著書を読むのがお勧めです。(経営学の勉強では特に試験委員対策が重要です)

試験委員の著書以外だと、田中弘先生の本がわかりやすくてお勧めです。

 

②については①とほとんど同じですが、徹底的に理解を意識した勉強をすることで、普段の答練の点数は下がります。それは自分の言葉で書いているからです。答練の採点は基本的にはキーワード採点なので、キーワードを暗記して答案に盛り込まないと点数が伸びません。

ただ、私は答練では常に暗記はせずに自分の言葉で書くように心掛けていました。点数は気にしない代わりに答練後模範解答を確認し、自分の理解とあっていたかを常に確認していました。

自分の言葉で答案を書くという一見当たり前のことですが、それができていない受験生は多いと思います。その原因は予備校で暗記を重視した指導を行っていることが原因です。暗記していればある程度の答案は書けますが理解して書いた答案との差は一目瞭然です。徹底的な理解は監査法人での業務でも非常に役立ちますので、会計士人生の中で大きな財産となると思います。

 

最後に③の簿記の仕訳と関連付けて理解することです。財務諸表論は誤解を恐れずに言えば簿記の理論科目です。管理会計でもそうですが、計算問題を解くときに理論的背景に結び付けて学習することで記憶の定着率が格段に上がります。

私は管理会計の計算問題に自信があったので、自然と管理会計の理論も好きになりました。それと同様に簿記に対する自信が高まれば自然と財務諸表論が好きになると思います。もしかしたら財務諸表論を得意になるための一番の秘訣は簿記に対する自信を高めることかもしれません。

上記の3点を意識すれば論文式試験本番での成果に直結した学習ができると思います。

公認会計士試験の学習方法(簿記)

簿記の学習方法

 

簿記の学習方法について記述します。

まず最初にテキストの内容を完璧に理解することです。TACでも大原でも同じだと思いますが、テキストの内容を完璧に理解していない限り論文式はおろか短答式の突破も難しいと思います。

私はテキストの問題をすべて間違えずに解けるようになるまで何度も何度も反復練習していました。答練を解くより前にまずはテキストの問題の反復練習を行い、その論点について完璧に理解する必要があります。答練の内容はテキストの問題よりも圧倒的に難しいので、テキストの問題を完璧に解くことができないと答練の問題で高得点を取ることは不可能です。

テキストの学習は退屈なので敬遠しがちですが、仕訳を覚えるだけでなくその仕訳の背景まで考えながら学習することで財務諸表論の学習にも役立つので一石二鳥といえます。また、背景を理解していれば少しひねられた問題にも対処できる点、記憶が定着しやすい点もメリットです。

 

次に答練を解くことです。私は答練はリアルタイムで解く必要はないと思います。ただ、ついサボってしまいがちな方はリアルタイムで受けたほうがスケジュール管理しやすいと思います。私は間違えた問題をファイリングし、その都度テキストに戻って確認していました。

間違えた問題のファイルから正解出来た問題は外していくのでファイルがどんどん薄くなっていくのは達成感があります。

簿記の基本は反復練習ですので、間違えた問題から優先的に何度も答練を解きなおし、わからない論点はその都度テキストに戻る癖をつけることで得意科目にすることができました。簿記を得意科目にすることは公認会計士二次試験突破のための最低条件だと思います。少なくとも簿記が苦手で論文式試験を突破できることはありえないと思います。

また、本番では時間が足りなくなるので、制限時間をできるだけ短く設定して問題を解く練習もしていました。そのおかげで論文式本試験では冷静に余裕をもって問題を解くことができました。

公認会計士試験の学習について

公認会計士2次試験の学習

 

私が2006年に公認会計士2次試験に合格した時の勉強法、時間管理について書きます。

会計士試験受験生の参考になれば幸いです。

私は大原がメインの予備校でした。(他にもいくつかの予備校の授業をスポットで受講していました。)

最後の1年間は時間管理を徹底し、適度に運動することでストレスをためないように心掛けていました。勉強だけだと精神的にきつくなりますし肩こりがひどかったので毎日近くのジムに行っていました。

最後の1年間の学習開始時点の得意科目は

簿記、管理会計(理論含む)、経営学

普通の科目は

財務諸表論、監査論

苦手科目は

企業法、租税法

でした。

 

1日のスケジュール

 

以下、平均的な1日のタイムスケジュールです。(ほぼ勉強しかしていませんが)

6時 起床

7時 予備校に到着

7時~12時

簿記の答練を必ず1問解き、あとは理論科目の学習を中心に行っていました。

12時~13時 昼休み

13時~15時 簿記及び管理会計の計算問題

15時~ 30分間の昼寝

昼寝の後、19時まで理論科目の学習(理論科目が苦手だったので眠気が少ない時間にやっていました)

19時~19時30分 夕食

19時30分~21時 簿記及び管理会計の計算問題

21時30分~23時 ジム

23時30分 帰宅

24時 就寝

以上です。

今考えると仕事よりもストイックです。

毎日勉強時間をストップウォッチで計測し、昼寝、休憩、たばこ時間を除いて10時間を超えるようにしていました。

日曜日の午後は絶対に勉強しないようにしていましたが、1週間で60時間以上は勉強していました。1年300日としても1,800時間なので年間2,000時間以上勉強しました。

徹底して勉強時間を管理すること、ストレスをためないことが全般的な学習に際し心がけていたことです。

各科目の学習法についても後日記載したいと思います。

公認会計士のキャリアについて③

コンサルティング会社への転職

 

3つめのキャリアとしてはコンサルティング会社への転職があります。

公認会計士試験合格後すぐにコンサルティング会社に入社するケースもありますが、監査法人から転職するケースが多いと思います。

会計士が転職するのは主に会計系コンサルティング会社(Big4系コンサルティング会社)です。

私の友人はM&Aのアドバイザリーやデューデリをやっています。その友人は監査法人退職後、まずはデューデリの担当をしていました。デューデリは監査との親和性が高いので、監査法人での勤務経験がある程度あれば問題なくできる業務です。ただ、監査よりさらにルーティンな業務なので1年で飽きたといっていました。

そこで、M&Aのアドバイザリーに移ったようです。M&Aのアドバイザリーは仲介業務なので成功すればクライアントから感謝されるので非常にやりがいがあるようです。ただ、デューが非常に厳しいので締切日近くになると深夜残業が続くようです。

フロント業務が好きであればM&Aのアドバイザリー、バックオフィスが好きであればデューデリが向いていると思います。

その友人曰くプロジェクトが終われば休みがとりやすいのでワークライフバランスがいいのが特に気に入っている点だと言っていました。その点では監査法人と似ていると思います。

 

戦略コンサル

 

会計系コンサルティング会社以外では戦略コンサルなどもあります。

以前留学していた時にBCGで働いている方とお会いしました。BCGで勤務されている方とお話しできるチャンスなんてそうないので根掘り葉掘り聞いてしまいました。

世間のイメージ通りBCGは非常に激務で深夜2時や3時にタクシー帰りが平均的な勤務時間だそうです。ただ、Time is moneyという考え方なので出勤もタクシー代が支給されるようです。(満員電車で通勤すると体力が奪われるので生産性を高めるためのルールだそうです。)

また、クライアントがBCGに支払っているフィーは非常に高額なので、非常に高いレベルの成果を要求されるようです。その型の給料は余裕で1000万円を超えていましたが、労働時間が長いので時間単価に直すとそれほどでもないとおっしゃっていました。

世間のイメージ通りUp or outの会社なので2年間勤務するだけでも大変だとおっしゃっていました。適性がないと判断されるとすぐに切られるようです。

非常に優秀でうまく昇進できた場合の年収は尋常ではないとのことでした。また、プロジェクトをうまく完遂できた場合の達成感も非常にあるようです。

自分に自信があって監査法人では得られないレベルの高給を手にしたい会計士であればおすすめの職場でしょう。(私には無理ですが)

 

公認会計士のキャリアについて②

税理士法人・会計事務所勤務

 

次のキャリアとしては税理士法人・会計事務所勤務になります。

税理士法人、会計事務所は大別すると以下のようになります。

・Big4系税理士法人

 

一番の特徴は国際税務に強い点です。(私の事務所が特定されると困るのでぼかして書きます)

概ね一般税務、国際税務、金融税務、移転価格、事業承継、外国人向けの申告等のサービスを提供しています。

一般税務でも専門性の高い連結納税や国際税務に強みを有しています。将来の転職を見越したキャリアで考えると非常に強いと思います。

業務自体は非常に激務で優秀な職員も多いのでパートナーに上り詰めるのは監査法人よりもはるかに困難です。ただ、その分パートナーの報酬は非常に高いです。部門長レベル(一般の会社で言えば取締役程度)で年収6000~8000万円程度です。理事長になればもちろんそれ以上の高給をいただけます。

この報酬は監査法人ではなかなかもらえません。ですので、非常に優秀でパートナーになれる見込みがあるのであれば非常に良いキャリアだと思います。

また、ほかの会計事務所や事業会社に転職する際にもBig4税理士法人での経験は高く評価されるので具体的な目標がなく、税理士法人に入りたい方にはお勧めです。

 

・資産税に強い税理士法人

 

資産税に強い事務所(タクトコンサルティングなど)もいくつかあります。事業承継や相続に関する経験を積めるのがメリットです。また、成果を出せばその分給料も上がるので待遇面でも恵まれていると思います。ただ、高い成果を出せるほど優秀であればその後独立したほうが高報酬は見込めますが。

高齢化が進む日本において事業承継や相続は大きなビジネスチャンスだと思います。また、資産税に特化していない通常の会計事務所では事業承継や相続の案件はあまり入ってこないので特化型事務所での豊富な経験は強みになると思います。

私ももし移転価格の仕事をしていなければ資産税の事務所に入っていたと思います。移転価格での独立は困難ですが、事業承継であれば将来の独立も可能ですしね。

独立志向の強い方には非常にお勧めです。

 

・大手税理士法人

 

税務に関する経験を万遍なく積みたいのであれば辻本郷のような大手税理士法人がお勧めです。激務ですがその分短期間に多くの経験を積めると思います。将来の独立を視野に入れている方にとってはいい環境ではないでしょうか?

ただ、激務なのにもかかわらず給料は少ないようです。。

他にも中堅どころの会計事務所等ありますが情報があまりないため割愛します。

公認会計士のキャリアプラン

監査法人

 

公認会計士のキャリアプランについて記載していきたいと思います。

まずは、監査法人で勤務し、パートナーを目指すことです。

これは公認会計士のキャリアの王道ですね。

監査法人に向いている方の特性として私が考えているのは、会計(基準)が好きな人です。会計基準の改正を逐一キャッチアップし、改正の背景まで考え、それを楽しいと感じるような人です。

やはり会計の専門家である以上最新の会計動向を熟知していることがクライアントから求められますし、そのような会計士であればクライアントとの信頼関係の構築がスムーズにいくと思います。

また、大規模クライアント(225採用銘柄のような企業です)のインチャージやマネージャーを務めていることも昇進への非常に重要なポイントです。そのようなクライアントは部署にとってドル箱ですので部署内での存在感が大きくなります。大規模クライアントを担当できるかは運の要素も大きいと思いますが、社内政治をうまくやることや中規模クライアントを担当していたとしても部署内での評価が高ければ大規模クライアントを担当するチャンスが巡ってくると思います。

 

最近の動向

 

私の同期でも日本人なら誰でも知っている大企業のインチャージを務めていた方は他の同期よりも1年早くマネージャーに昇進しています。大規模クライアントを担当しているのは監査法人内の力関係を左右する最も重要なポイントです。

また、それ以外に最近同期から聞いた話では海外駐在経験者が優遇されるようです。海外駐在を経験していればその地域の専門家として部署内では重宝されます。特に普通の人が行きたがらない場所(インド、南米、アフリカなど)への駐在経験は大きな強みになるようです。

日系企業にとって、北米、ヨーロッパ、東南アジアは飽和状態ですし、今後の海外展開を考えると日本人にとってあまりなじみのない南米やアフリカ、中東などになるでしょう。その際に当該地域への駐在経験は大きな強みになります。

また、駐在経験により英語力が高まるという付随的なメリットもあります。監査法人の会計士の英語力は信じられないほど低いので(私が国内監査部門にいたからだと思いますが)、強みになると思います。

以前の記事で書いたようにマネージャーへのハードルは下がっていますが依然としてパートナーは狭き門です。パートナーは責任が重くリスクも高いですが、安定していて会計士キャリアのゴールとしては素晴らしいと思います。

もしパートナーに昇進できない場合(シニアマネージャー、マネージャーで滞留している場合)には肩たたきが待っているようです。